あなたはチグであたしはハグよ

少し眠ってしまった身体を伸ばしてみる
身体がボキッとかバキッとか言うので
あぁぁとかうぅぅとか
情けない声が出る


自分が今居る場所がどこか確かめるのに
携帯電話が一番手っ取り早くて
落っこちてたケータイをソファの下から拾った


深夜0時を過ぎていて
メールが2件来ていた

キャプテンからの業務連絡と

TIG-HUGSのグループライン

打ち上げの計画(焼肉)


ソファから転がるように落ちて
お風呂の掃除を始める
そのままシャワーを浴びて

明日晴れるかなあって
回してた洗濯機から洗濯物を取り出す

干す




やっぱりあたしは雨女かもしれんなあって
思った
単独公演の日は雨だった
さらにとーっても寒かった



寒い中、雨の中
ご来場ありがとうございました
ほんと、ありがとうね



ワンマンやらないか?と
言われた時は

この会話どう逃げようかと思ってた

ごめんなさい
思ってました




だってその一ヶ月くらい前に
恥ずかしながら
お誕生日ワンマンやったばかりで

加えて一向に収まらないコロナに
飛んで跳ねてくスケジュールに
まともに宣伝出来ん状況が続いてて
それなりに気が落ちてて

引越しもですか、え、生活しなきゃですか

生きてるってアンビリバボー!


つまり

あたしは
先のことを考える余裕が無かったのでした



なので


やりません!って言いました




しかし、しかし


あの男なかなかの落とし上手なもんで 

真っ直ぐほんとの声で言ってくれたもんで、 

そうなるとあたしはいとも簡単なもんで、 



散々口説かれたと言ってますが 

いや実際そうなんですけども 
結果 


この猫背で丸まった背中を強く押してくれたのは

BLACKandBLUEのオーナーでもある 
Kato-kingさん


彼の無垢で無邪気な部分に動かされる人は
きっと あたしだけじゃないはず 


俺らも一緒に協力するから 

って言ったのをあたしは勝手に都合よく解釈して 

じゃあ、ギター弾いてくれますよね? 

って不躾にも言い放ってみた

どうだ参ったか!このやろう 
前言撤回しやがれこのやろう!


ところがどっこい

このあたしのふがふがした声色に

彼は微塵も屈せず 

「いいの!?」

と間髪入れず返してきた




その瞬間

あたしはプロレスリングに
白いタオルを放り込みゴングさえ自分で鳴らし
大声でまーけーまーしーた!って
ゴムの仕切りをバインバインしてる自分が浮かんだ


完敗だった


そもそも屈託なく笑う人間に
清々しい程前向きな人間に
あたしはすこぶる弱い


腹を決めた決め過ぎて噴火したあたしは
おうおうそうかいそうかい

それならもう全員巻き込んじゃうもんね!
って


普段ドリンクカウンターに居るが
どうやら歌ってるらしいぞ、の
びりすけさん
横を見る度に笑顔で一緒に声を出してくれた


何度かPAでお世話になっていたし
何度も共演した
ベースのうのしょうじさん
楽曲のアレンジの大半と和やかさを担ってくれた


そしてカトキンさんが
アリーちゃんとやるなら、と
連れてきてくれたのは
ドラムの桜井佑哉さん
とっても大きな包容力と呼吸で刻んでくれた


TIG-HUGSなんてキュートな名前をつけてくれたのは
このワンマンの影の主謀者Kato-kingさん
少年のようなあの笑顔で
エレキギターを弾いてくれたひと


ならばPAはしょうへい君だ
大変だった?って聞いたら
最高だったってキラキラした目で言ってくれた
ちゃんとマイクの声を聞いてくれてた

あたしは4人の上で
跳ねて飛んで歌って弾いて困らせて笑ってた

あぁ満足!





予定してたけど
8月中は全部飛んだりして
結局数回しか入らなかったリハーサル


それに加えて
本番前最後のリハーサルで
新しい曲を増やすあたし

本番前に変更するあたし

セットリストだって変えちゃうもんね

リズムはあたしと一緒にしてちょうだい
呼吸は同じがいいからよろしくね
あとは楽しんで!


ほないってらっしゃい!



実は本番前
あたしは受付の隅っこから
ステージに向かうメンバーを見ていた

良い夜にしようねって円陣組んたあと、


あの4人の横顔が
今思い出しても身震いするくらい
かっこよかった

人が何かを成そうとする顔はほんとに
かっこいい

それを見ただけであたしは泣きそうになった


一緒に沢山宣伝して
一緒に音を鳴らしてきたメンバーが
今夜自分の為に一緒に居てくれる

そしてそれを
あなたが、見にきてくれた
あなたが居なきゃ始まらないんだ


ありがとうございました


そして
終わった後に各々が

だって最後のリハで曲増やすんだもの!とか
無茶振りがすごかった!とか
ありーちゃんわがまま!とか


吹っ切れたように一斉に言い出した!
今のいままで誰も言わなかった
きっとみんな我慢してた言葉たち!


もうほーんっと


愛しいね



ありがとうございました



今あの日の、ワンマンの、録音を聴いてる

あたし
がんばるねって皆んなに言ってる
こんなに来てもらったんだもん
がんばるしか無いよねって

言ってる

緊張が言葉のリズムを早めている
安堵ですこし震えている
嬉しくて震えている


ありがとうございました




そしてある日突然「あたし!金髪にする!」と言い出したのにも関わらずお休み返上でウチにきてくれたり当日ヘアーセットしてくれた美容師ゆいなちゃん、彼女はあたしの東京でできた初めての友達で親友
special thanks、
嬉し過ぎて全部のアイコンこれにしようかと思ったけど調子乗り過ぎやなって自重した写真
そして翌々日は横浜でやってる桃山スワンのライブ
同じ楽曲でも演奏する人が変われば曲は変わるんだよ
いいよね、音楽って、いいよね、
人間だよねやっぱ音を鳴らすのは、
pic 中zy/りゅう/山本製作所/にゃごご/nae/(敬称略)
そのほか沢山の人達からいただきました、ありがとう


流してたワンマンの録音が
もう最後の曲だ

やっと解けたのか声色が柔らかくなった

ちゃんと間違えてたカポに
うのさんの突っ込み


ワンマンのあと
帰ってきたお布団の中
寄稿させてもらった
「なぜあたしは歌うのか」をもう一度読んだ
自分に言い聞かせるみたいに
毎日は過ぎてゆく、あしたから、あしたからまた

あたしはひとりで歌い出す


これからもよろしくね
チグとハグ/中村アリー


あたしが全部を無しにして
いちから100まで数える間に
あなたは全部思い出して
100から1まで数えている

あたしが世界に背を向けて
退屈の中でこじれる間に
あなたは世界を背に受けて
日当たりの中ででこじらせている

お花は食べれません


あなたはチグで
あたしはハグよ
あなたはハグで
あたしはチグよ
いつまで経っても二人はチグハグ

あたしが季節を鵜呑みしたなら
あなたは季節を探り当てて
誤解を解かなくちゃならない

あたしは時々無慈悲になるから
たくさんのことは愛せないわ
あなたはいつでもはつらつで
全てを一飲み愛そうとしている   

食べれるお花もあるよ


あなたはチグで
あたしはハグよ
あなたはチグで
あたしはハグよ
どこまでいってもふたりはチグハグ